このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「お風呂」です。
母さまと一しよにはいるときや、
私、お風呂がきらひなの。
母さまは私をつかまへて
お釜みたいにみがくから。
だけど一人ではいるときや、
私、お風呂が好きなのよ。
そこでする事、多いけど、
なかで一ばん好きなのは、
ぽかり浮べた木のきれに、
石鹸(しやぼん)の凾や、おしろいの、
かけた小瓶を並べるの。
(それはすてきな御馳走の、
ならんだ黄金の卓子(テイブル)で、
私は印度の王樣で、
白蓮紅蓮咲きみちた、
きれいなお池に浸つてて、
涼しいお夕飯あがるとこ。)
玩具を持つてゆくことは、
いつか母さま、禁(と)めたけど、
時にや隣の花びらが、
散つてお船になつてくれ、
時にや私の指たちが、
魔法つかつて長くなる。
誰も知つてやしないけど、
私、お風呂が好きなのよ。
(お風呂:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
私もお風呂はニガ手でした。
母が十まで数えたら出ていいと言うので、
九まで数えると決まって十は長~く言う母。
みすゞさんのように想像力があったなら、
ずいぶんお風呂も楽しかったのに……。
鈴木 澪
子どもはお風呂が好きなのに、
大人が洗うのはほんとうにきらいです。
にげてばかりの子どもたち。
誰もが思い出しますね。それから、
冬には十かぞえ、二十かぞえて湯につかるよう、
つかまえる大人からにげること。
この詩のようにあそんでいるなら、
ずっと長くても平気です。
大西 進