線香花火を
買つた日に、
夜があんまり
待ちどほで、
納屋にかくれて
たきました。
すすき、から松、
ちやかちやかと、
花火はもえて、
いつたけど、
私はさみしく
なりました。
(晝の花火:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
夜になる前にたったひとりでする花火、
かくれて花火をしたって
ちっとも楽しくないという気持ちがよく感じられます。
子供はそれでも待ち切れず、こんな風になるものです。
花火の思い出というものは、誰にもあるものですし、
楽しくもあり、その終わった後は
やっぱり寂しくもあります。
鈴木 澪
一人で納屋で昼間から、さびしさにたえられず、
でも終ればやっぱりさみしい、みすゞです。
火をみると過去も未来もみえるから不思議です。
燃える火は、現実と過去、未来を連想させます。
希望の火、祈りの火、生きる火、
花火はそれがつまっています。
大西 進