きりぎつちよん、山のぼり、
朝からとうから、山のぼり。
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
山は朝日だ、野は朝露だ、
とても跳ねるぞ、元氣だぞ。
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
あの山、てつぺん、秋の空、
つめたく觸(さわ)るぞ、この髭(ひげ)に。
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
一跳ね、跳ねれば、昨夜見た、
お星のとこへも、行かれるぞ。
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
お日さま、遠いぞ、さァむいぞ、
あの山、あの山、まだとほい。
ヤ、ピントコ、ドッコイ、ピントコ、ナ。
見たよなこの花、白桔梗(しらききやう)、
昨夜のお宿だ、おうや、おや。
ヤ、ドッコイ、つかれた、つかれた、ナ。
山は月夜だ、野は夜露、
露でものんで、寢ようかな。
アーア、アーア、あくびだ、ねむたい、ナ。
(きりぎりすの山登り:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
何とも楽しげなきりぎりすの山登り風景。
想像の自由さがほとばしります。
こんな風な考え方が出来たらきっと退屈しないですね。
しかし、この詩はみすゞさんの最後の作品で、
「童謡で書いた遺書」だとも言われています。
そう思うと神妙に詩の中身を考えてしまいます。
鈴木 澪
きりぎりすは誰でしょう。
みすゞです、みすゞさんです。
元気の出る曲にしようと思ったり、
この詩にそって作曲をしようと思ったり、
迷った。うたをきいて下さい。(CDあり)
大西 進