このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「電報くばり」です。
赤い自轉車、ゆくみちは、
右もひだりも麥ばたけ。
赤い自轉車、乗つてるは、
電報くばりの黒い服。
しづかな村のどの家へ、
どんな知らせがゆくのやら、
麥のあひだの街道を
赤い自轉車いそぎます。
(電報くばり:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
電報その物はいまでもありますが、
その役割は変わってきています。
もちろん電話が普及する以前は、
この電報が大いに役に立ちました。
嬉しい知らせより悲しい知らせが
より多く運ばれたのではないでしょうか。
遠く離れた家族や親類の良くない知らせが、
夜中でもその家の扉を叩きました。
電報くばりの人はやるせない気持ちを
感じながら、それでも少しでも
早く伝えたい気持ちで自転車を
走らせたのでしょう。
鈴木 澪