「泣きむし、毛蟲
つまんで捨てろ。」
どつかで誰かいふやうな。
そつとあたりをみまはせば、
青い櫻の葉のかげに、
毛蟲がひとつ居たばかり。
廻旋塔のかげをさす、
運動場のひろいこと。
遠い校舎のオルガンの
音もしづかにひびき出す。
いまさらうちへははいれない
さくらの葉つぱをむしつてる。
(泣きむし:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
昔から泣きむしは皆にきらわれ、
からかわれたのでしょうね。
そして毛虫も同じように扱われていた事が、
はやし言葉「泣きむし、毛虫~~~」という
短い文句によく表わされている、と感心させられます。
でも、あの時のはな垂れ小僧の泣き虫も、
毛虫もやがて立派な大人になるし、
きれいな蝶にもなる。
みにくいアヒルの子もきれいな白鳥に……。
みんなみんな成長して行きます。
鈴木 澪
すねたり、しかられたり、
いじめられたり、さみしかったり、
でもわけもなく泣いて泣いて
気持ちを晴らしたこともあったっけ。
あとはほんとうにテレクサイネ。
オルガンの音で気分がふっと
我にかえったのですね。
大人はどうしていたでしょう。
大西 進