誰がほんとをいふでせう、
私のことを、わたしに。
よその小母さんはほめたけど、
なんだかすこうし笑つてた。
誰がほんとをいふでせう、
花にきいたら首ふつた。
それもそのはず、花たちは、
みんな、あんなにきれいだもの。
誰がほんとをいふでせう、
小鳥にきいたら逃げちやつた。
きつといけないことなのよ、
だから、言はずに飛んだのよ。
誰がほんとをいふでせう、
かあさんにきくのは、をかしいし、
(私は、かはいい、いい子なの、
それとも、をかしなおかほなの。)
誰がほんとをいふでせう、
わたしのことをわたしに。
(誰がほんとを:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
みすゞさんは本当のことはだあれも言ってはくれないと、
ちょっと嘆いています。
本当のことを言ってくれる人は貴重です。
それこそ親友と言えるでしょう。
その真の親友を、どれだけの人が持っているでしょう。
時には、裏切られて苦い思いをしたりと
人間関係は複雑です。
花も小鳥も言ってくれない淋しさ……。
この詩は人間の真の心の叫びをうたっていると思います。
本当のことを言うと、優しくなれない……。
それで人間関係の微調整ができているのかも知れません。
鈴木 澪