このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「天人」です。
ひとり日暮れの草山で、
夕やけ雲をみてゐれば、
いつか参つた寺のなか、
暗い欄間の彩雲に、
笛を吹いてた天人の、
やさしい眉をおもひ出す。
きつと、私の母さんも
あんなきれいな雲のうへ、
うすい衣着て舞ひながら、
いま、笛吹いてゐるのだろう。
夕やけ雲をみてゐれば、
なんだか笛の音がする、
かすかに遠い音がする。
(天人:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
お母さんと離れて暮らしていたみすゞさんは、
空を見上げてはお母さんを想っていたのでしょう。
それにしても、空は本当に色々なことを
想わせてくれる空間で、不思議があふれています。
鈴木 澪