このページでは金子みすゞさんの

本日の詩をご紹介しています。

 

「きょうのみすゞさんの詩は・・・」

 

「石ころ」です。

   

きのふは 子供を ころばせて

 

けふは お馬を つまづかす。

 

あしたは たれが とほるやら。

 

田舎の みちの 石ころは

 

赤い 夕日に けろりかん。

 

 

(石ころ:金子みすゞ)

 

『金子みすゞ全集』

(JULA出版局)より

 

 

みすゞさんにかかっては、

 

普段は忘れられている石ころでさえ

 

素敵な詩に変わってしまうのだ。

 

この詩はそんな詩です。

 

どんなものにも深い愛情をもって

 

優しい心の持ち主であることの証しです。

 

みすゞさんには詩にならないものなど

 

無かったのではあるまいか?

 

見る物全て美しい言葉に変え、

 

ある時は悲しく、ある時は明るく、

 

みすゞさんの心がほとばしり出ています。

 

感受性豊かな女性であったみすゞさんは

 

石ころを漠然と見のがすことなく、

 

そこに物語りを作ってしまう。

 

すごいなあと思います。

 

一体、どんな思考回路をもった

 

女性だったんでしょう。

 

ひとつの才能と言ってしまえば

 

それまでですが、

 

一言では言えないそこには

 

深い深い彼女の人間性が

 

あるのだと思います。

 

詩のふしぶしに淋しさ、

 

悲しさが感じ取れるから……。

 

田舎のみちの石ころは、

 

赤い夕日にけろりかんとうたった

 

この時のみすゞさんは、

 

石ころに息を吹き込み

 

生きた石ころになっています。

 

子供をつまづかせ、

 

馬をつまづかせ、明日は……。

 

なおも、道でがんばっている石ころ、

 

石ころばんざいです。

 

鈴木 澪