このページでは金子みすゞさんの

本日の詩をご紹介しています。

 

「きょうのみすゞさんの詩は・・・」

 

「白百合島」です。

 

私ひとりが知つてゐる、

 

遠くの遠くのはなれ島。

 

いつも私は學校の

 

ポプラのかげで、地圖を描く。

 

掃かれりや消える島だけど、

 

描くたびかはる地圖だけど、

 

いつも湖水がまんなかに、

 

いつも御殿がその岸に。

 

雪より白い、かぐはしい、

 

御殿のなかにすむひとは、

 

うすいみどりの裾ながく、

 

金のかむりのおひめさま。

 

島は白百合、花ざかり、

 

空まで白い百合の香に、

 

船は寄つても断崖(きりぎし)の

 

手にも取られぬ花ばかり。

 

青いポプラの葉のかげで、

 

いつも私は地圖を描く。

 

飽かずに、飽かずに、いくたびも、

 

「しらゆり島」の地圖をかく。

 

 

(白百合島:金子みすゞ)

 

『金子みすゞ全集』

(JULA出版局)より

 

 

みすゞさんがいかに空想好きの

 

少女時代を過ごしていたのかを、

 

強く思う詩です。女の子はみんな

 

お姫様は好きだけど、白百合島まで

 

思いを馳せるなんて出来ません。

 

鈴木 澪

 

 

空想好きのみすゞさんの得意の一遍。

 

大西 進