このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「露」です。
誰にもいはずにおきませう。
朝のお庭のすみつこで、
花がほろりと泣いたこと。
もしも噂がひろがつて
蜂のお耳にはいつたら、
わるいことでもしたやうに、
蜜をかへしに行くでせう。
(露:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
私はこの詩が、みすゞさんの詩の中で特にすきです。
なんと優しさに満ちていることでしょう。
蜜を取られ、泣いているお花、
ミツバチはそれを取らなければならない。
みすゞさんは、ミツバチに
お花が泣いていることを内緒に
しておこうと思っています。
ミツバチのことを思い、噂が広まるのを恐れて……。
このような詩が書けるみすゞさんって
すごいなあと思います。
深く物事を考えることのできる女性です。
鈴木 澪
胸のいたみ、誰にも相談できぬこと、
一人ひとりもっているのではないでしょうか。
そんなときの舞台づくりのみすゞさんの上手なこと。
この花も、すみっこにさいている花を
主人公にして、美しくもせつない思いです。
この詩は当時、北原白秋や野口雨情らにも
高く評価されました。
大西 進