このページでは金子みすゞさんの
本日の詩をご紹介しています。
「きょうのみすゞさんの詩は・・・」
「舟のお家」です。
お父さんに
お母さん、
それから私と、
兄さんと。
舟はお家はたのしいな。
荷役がすんで、日がくれて、
となりの舟の帆柱に、
宵の明星のかかるころ、
あかいたき火に、父さんの、
おはなしきいて、ねんねして。
あけの明星のしらむころ、
朝風小風に帆をあげて、
港を出ればひろい海、
靄(もや)がはれれば、島がみえ、
波が光れば、魚が飛ぶ。
おひるすぎから風が出て、
波はむくむくたちあがる、
とほいはるかな海の果、
金の入日がしづむとき、
海は花よりうつくしい。
汐で炊(かし)いだ飯(まま)たべて、
舟いつぱいに陽をうけて、
帆にいつぱいの風うけて、
ひろい大海旅をする、
舟のお家はうれしいな。
(舟のお家:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
家族一緒だとどこにいても楽しいもの。
ひとつの舟に乗り生活を供にするのは、
よりいっそう楽しさが倍加するものです。
親の苦労をよそに、
子供はなんの心配もいりません。
ただただ楽しいのです。
鈴木 澪