このページでは金子みすゞさんの

本日の詩をご紹介しています。

 

「きょうのみすゞさんの詩は・・・」

 

「山の枇杷」です。

  

山の枇杷、

 

知らない人が枝にゐて、

 

峠をのぼるわたしらに

 

枝ごと投げてくれました。

 

黄いろく熟れた

 

枇杷の實を──

 

山の枇杷、

 

いまは葉ばかり、誰もゐず、

 

峠のみちのあき風に

 

吹かれて私はくだります。

 

ひとつの影の

 

ながいこと──

 

 

(山の枇杷:金子みすゞ)

 

『金子みすゞ全集』

(JULA出版局)より

 

 

山になる果実は実に美味しいものです。

 

乾いたのどに何とやさしいことか!!

 

実のなる季節を終え、

 

葉ばかりになった木を見ると、

 

峠の道も長く感じられます。

 

鈴木 澪