「夕燒小燒」
うたひやめ、
ふつとだまつた私たち。
誰もかへろといはないが。
お家の灯がおもはれる、
おかずの匂ひもおもはれる。
「かへろがなくからかァへろ。」
たれかひとこと言つたなら
みんなぱらぱらかへるのよ、
けれどももつと大聲で
さわいでみたい氣もするし、
草山、小山、日のくれは、
なぜかさみしい風がふく。
(夕ぐれ:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
みすゞさんは、幼い子供の心根を表わすのが得意です。
そして、さみしい気持ちも何度も経験しているから、
こんな詩がこんな風に書けるのですね。
鈴木 澪
子どもの心を、こんなにピッタリ書くことができるみすゞさんは、
子どもの心を大事にのこした大人。
大西 進