あれは
いつかの
秋の日よ。
お馬車で通つた村はづれ、
草屋が一けん、竹の垣。
竹の垣根に空いろの、
小さな朝顏咲いてゐた。
──空をみてゐる瞳のやうに。
あれは
いつかの
晴れた日よ。
(小さな朝顏:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
秋の季節外れに咲く小さな朝顔の花。
その花が空を見ている瞳のように、
という表現はみすゞさんの得意な擬人法なのでしょうが、
誰にも見過ごされそうな、小さな花にも目を向け、
それを心のページの中の1ページに
加えとても大切にしている感じがします。
鈴木 澪