年とつた庭の楓に
十一月のお日さまは
ときが來たよ、といひました。
年とつた庭の楓は
うつうつと晝寢してゐて
色づくことを忘れました。
新建ちのお倉の屋根が高いから
十一月のお日さまは
ちらとのぞいたきりでした。
年とつた庭の楓の
青い葉は青いまんまで
しづかに散つてゆきました。
(老楓:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
お年寄りに寄せる優しい思い。
お年寄りの楓だったら、
色づくことを忘れることもあるのですね。
人間も年をとるとうっかりしたり、
いろいろと不自由なものです。
若いみすゞさんは多方面に心配りをすることのできる、
人のことを親身になって考えることの
できる人だったのですね。
鈴木 澪
みんな秋には紅葉するのに
陽かげのかえでは色づきません。
人に気づかれない一枚の葉っぱに、
いっぱいの心を寄せるみすゞさん。
ふと涙がこぼれます。
私も……、と共感しているようで……。
こんな風に自分をみる瞬間があるのかと。
大西 進
※大西 進先生は、みすゞさんの詩のすべてに作曲された音楽家です。
私、鈴木 澪は先生にみすゞさんの歌を歌うコーラス部に参加し、大西先生に指導をうけました。
そして、先生の影響でみすゞさんの詩にイラストを描くことを始めました。
みすゞさんの詩画集も作っています。
金子みすゞ詩画集(鈴木澪イラスト)
おのおの16点の詩とイラストを掲載しています。
第1集「みんなちがってみんないい」
第2集「見えぬものでもあるんだよ」
第3集「みんなを好きに」
また明日もぜひ遊びに来てくださいね!
お待ちしています。猫の手舎