このページでは金子みすゞさんの

本日の詩をご紹介しています。

 

「きょうのみすゞさんの詩は・・・」

 

「美しい町」です。

  

ふと思ひ出す、あの町の、

 

川のほとりの、赤い屋根、

 

さうして、青い大川の、

 

水の上には、白い帆が、

 

しづかに、しづかに動いてた。

 

さうして、川岸の草の上、

 

若い、繪描きの小父さんが、

 

ぼんやり、水をみつめてた。

 

さうして、私は何してた。

 

思ひ出せぬとおもつたら、

 

それは、たれかに借りてゐた、

 

御本の挿繪でありました。

 

(美しい町:金子みすゞ)

 

『金子みすゞ全集』

(JULA出版局)より

 

 

本好きの少女のみすゞさんは

 

いつも空想の中にいたのでしょう。

 

その中では

 

自由に思うままの自分になれたから。

 

鈴木 澪

 

 

全集第一集の背のタイトルになっている。

 

みすゞさんが思いをこめたこの詩は

 

特に好き。ドンデン返しも見事。

 

だって、読んでいくうちダマされて、

 

それを計算していたみすゞさん、

 

ペロッと舌など出してません?

 

大西 進