小さい箱の家にゐる、
これは私のかひこです。
かはいいけれど、人形は、
ものも言はない、うごかない。
かひこは、かはいい音立てて、
青い桑の葉たべてます。
やがて七つの繭になり、
七すぢ絲がとれたなら、
小人の姫の着るやうな、
紅色おべべも織れませう。
仲よく桑をたべてゐる、
これは私のかひこです。
(私のかひこ:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
みすゞさんはかいこを愛情持って育てています。
そのかいこは特別です。
その昔「かいこ」は「おかいこさま」と呼ばれ、
かいこを飼う農家などではとても大事にされていました。
お金を産む虫なのですから……。
かいこの繭から取れる糸はやがて
きれいな絹織物に生まれ変わります。
鈴木 澪